(R元年8月15日)
RC造のモデル化 (その1)
RC造のモデル化(その1)
地震の揺れから建物を守る「構造スリット」ですが、国土交通大臣が閣議後の記者会見において耐震構造の施工ミスの実態の把握を進めるとしました。
「構造スリット」は、鉄筋コンクリート造の壁の柱際、あるいは梁上、梁下等に設ける
緩衝材です。当然のこと地震の揺れで建物が損傷するのを防ぐためのものです。
設計どおり施工されない場合には、地震による建物の変形などを「構造計算」によって
確かめているのですから、前提条件が崩れてしまいます。
構造スリットと構造計算の関わりはそのRC造のモデル化に影響を及ぼします。
毎回、世間一般では「問題視」されてから実態の把握・調査結果から必要な注意喚起など対応を検討し、特定行政庁に改修の指導を行わせるとのことであり、後手の対応である。
このような「施工ミス」はなぜ起きるのか・・・そこに何が欠落していて、どのように
事前の対応を行うべきかが重要なのです。
地震の巣である日本列島の隅々までこのような問題ばかりが浮上する。
耐震偽装事件のあと、「法改正」を行い実務者により一層「構造の理解」させるべきなのに
いまだに「構造計算の出来ない一級建築士」がほとんどである。
このことに国土交通省は目覚めて欲しいのです。
当方の全国各地の「構造支援」はボランティアの「滅私奉公」です。
企業の利益優先から徹底的な「法の最低基準」さえ守れない事案が次々に露呈している。
沖縄県の建物は大多数がRC造です。その施工実態も設計どおり施工されているか詳しく
調査されるでしょう。また、「法改正」により「配筋検査」と同様に「構造スリット検査」も検査対象に加わってくるでしょう。
なぜ、「構造スリット」なのか・・・そこに「技術基準解説書」のP-683の記載にある
RC造のモデル化と「基本的な考え方」を再認識する必要があります。
(R元年8月25日)
RC造のモデル化 (その2)
RC造のモデル化(その2)
地震被害を思い起こすと、「せん断破壊は命取り」に気付くはずである。いかに「せん断破壊」させないか・・・「靭性(ねばり)」に期待させる場合の要点は何かを再考すべきです。昭和43(1968)年十勝沖地震で何が起き、何をどのように「法改正」したか気付くべきです。地震国である我が国では、自然災害等と建築基準の変遷が歴史を残しています。
1968年5月16日、十勝沖地震 (M7.9)が発生しました。青森を中心に北海道南部・東北地方など、死者52人、負傷者330人、建物全壊673棟、半壊3,004棟を記録しています。
青森県下で道路損傷が多く、津波は三陸沿岸3~5m、襟裳岬3m、浸水529棟、船舶流出127隻を数えましたが、重要なのは鉄筋コンクリート(RC)造建築の被害が目立った事です。
その結果、1971年には建築基準法耐震規定(RC造せん断補強の強化)に至ったのです。
この時、「短柱」となる学校校舎の「可撓長さ」に気付き、「校舎の腰壁」などに絶縁の
措置を取ることに「構造スリット」があったのです。
「ピロティ建物」などは典型的な「せん断破壊」に見舞われていたはずです。
当時の建設大臣が建築構造に深い理解や知識があれば、学者に言われなくても気付くはずの理論です。地震に翻弄されて「法改正」となる資本主義社会の「経済コスト」と天秤にかける「構造設計」が全国各地で展開されています。残念なことですがこれが現実である。今更ながら、「技術基準解説書」を読破しろ・・・は無理なのでしょうか。
「施工ミス」ではなく「施工しにくい技術」であるなら「技術的な改善」を優先させなければならないでしょう。「技術立国」である我が国の使命でもあるはずです。
緩衝材の固定化とか、コンクリート打設状況により「ねじれること」の防止策などですが
「基本的な考え方」から一歩先を見据えて「モデル化」になる改善策が出るのが望ましい。
人体に例えれば「センサー機能」を構造体に内蔵し「ストレス発生」と「緩和」が適正に
連動するシステム構築されるなど「新しい対応」が是非とも必要であると思います。
これだけ、IC技術が進歩しているのに「空気」を使った「エアー免震技術」の解禁を認定させないなど「世の中をよくしていこう」という発想を認知する動きも理解されていない。
(R元年9月05日)
RC造のモデル化 (その3)
RC造のモデル化 (その3)
耐震偽装・杭先端が支持層に届かず・構造スリット施工ミスなどを見ていると、これは人偽的、あるいは恣意的な発想にあるように思える。自動車の車検も「認定工場」の舞台裏と「陸運局」との認可権に絡む倫理的な基本が欠落するはずです。事務次官が定年後に
「迂回して天下り」することが横行するこの中央集権のシステムを抜本から改めない限り
この国の行く先は永遠に過去と同じ繰り返しとなります。中央官庁の外郭団体である
「〇△機構」と呼ばれる特殊法人ばかりが目につきます。税金の無駄な垂れ流しなのです。
どうして「車検」に通過するはずでない内容の車両が公道を走るのかと同様である。
景気動向を見ながら次々に増税させて、この国の行く先に不安を覚えます。
某経済学者が唱える施策の「ベーシックインカム」も財務省が決断すれば可能なはずです。どこに60万円しか収入がないのに100万円使う家庭がありますか・・・「ベーシックインカム」は資本主義社会と一線を画すかも知れませんが、標準的な4人家族が最低限の生活費を国が支給する施策です。
その代わり2,000万円問題でゆれる「年金制度」もなくなります。税金の抜本的な改革を行い国のあり方が基本から変わります。政治と関わらない「経済学者」の理論なのです。
今回の「構造スリット」の「施工ミス」の実態調査の結果から見えてくるのは、また法による「規制」です。関東大震災のような地震被害を今、「首都圏直撃」の直下型地震に見舞われますと、「首都機能」は働かず、「非常事態宣言」となります。
「常に備えよ」・・・「災害は忘れた頃にやってくる」・・・まさにそのとおりである。
いつどこで、どのような大地震が発生するか誰にも予測のつかない「運命」なのです。
だからこそ、耐震対策が重要となり「構造の基本」を徹底的に理解する必要がある。
現状の約37万人の一級建築士のうち、「構造計算のできる一級建築」は約1万人でよい
はずはありません。なぜ、国土交通省は一級建築士の考査に「構造計算」を課さないのかが不思議なのです。議員立法も国会議員の責務です。是非、「法改正」」を望みます。
当方のボランティアである「滅私奉公」は可能な限り全力投球させ頂き、「ライフワーク」として頑張ります。
(R元年9月15日)
RC造のモデル化 (その4)
RC造のモデル化 (その4)
前回までは、「ボヤキ・嘆き」のような論評でしたが、少し技術的な本論に入ります。
まずは、「技術基準解説書」のP-682から始まる付録1-3.2を読破する必要がある。
また、日本建築学会などの専門文献も参考になります。
「構造スリット設計指針」なる文献も社団法人日本建築構造技術者協会が発行されて
いますので、実務者にとっては必携です。
「構造スリット」を設ける目的は
悪影響を及ぼす雑壁(袖壁、垂れ壁、腰壁)を、柱又は梁から切り離すことである。
「悪影響はなぜ」及ぼすか
腰壁や垂れ壁、袖壁を形のまま評価して計算すると、応力集中や柱・梁の可撓長さが短く
なり、せん断破壊が起きやすくなる剛性に関係してくるのです。
「部材の剛性」とは
材料のヤング係数Eと断面形状から「曲げ剛性」「軸剛性」
材料のせん断係数Gと断面形状から「せん断剛性」
が、応力と変形となって関わることです。
「構造スリット」の意味は
柱際に設け、「柱と壁が繋がっていない状態」にする。
それにより「柱の剛性を大きくしない」のです。梁も同様です。
構造スリットの目地幅は
鉛直スリットの目地幅 壁高さの1/100など
水平スリットの目地幅 30㎜など
などというのは、「技術基準解説書」のP-693をご参照下さい。
振れ止め筋については
完全に柱や梁と切り離さず「振れ止め筋」で留めて、地震で雑壁が倒れないようにする。
この詳細は、「構造スリット設計指針」が参考になります。
(R元年9月25日)
RC造のモデル化 (その5)
RC造のモデル化 (その5)
前回に続き、少し技術的な本論です。
詳しくは、「技術基準解説書」のP-682から始まる付録1-3.2を読破する必要がある。
また、日本建築学会などの専門文献も参考になります。
「構造スリット設計指針」なる文献も社団法人日本建築構造技術者協会が発行されて
いますので、実務者にとっては必携です。
「RC造」はどうあるべきか
雑壁(袖壁、垂れ壁、腰壁)により、突然バランスが悪くなる。
「バランスを解消する」には
バランスの悪さを解消するのが「構造スリット」である。
「構造スリット」の構造計算上の取り扱いは
適切にモデル化して「構造壁」と「非構造壁」に区別する。
その内容はP-685付表1.3-3に明示されている
構造壁なら
剛性を評価して構造部材として期待する性能を評価する。
非構造壁の場合は
耐力を無視し、その壁が取り付く部材に及ぼす影響を考慮する。
構造スリットにはタイプがある
雑壁(袖壁、垂れ壁、腰壁)のタイプの代表的な例がP-684付図1.3-16に明示されている。
スリットの配置及び詳細は
P-692、693、694に明示されている。
(R元年10月05日)
RC造のモデル化 (その6)
RC造のモデル化 (その6)
実務対応の本論です。
参考となる文献類の一覧が、「技術基準解説書」のP-695にあります。
また、前回まで引用した内容の源は、財団法人日本建築センターのビルディングレター
抜刷として1991年1月に発行された冊子にもあります。
この冊子は「2次壁が柱梁等の構造部材の力学性状に及ぼす影響」として、構造計算時に
必要とされる考慮事項とその方法に主眼をおいて記述したものとなっています。
構造計算時における2次壁の取り扱いが適切でないと、柱や梁に脆性破壊が生じた地震
被害となります。だからこそ、適切なモデル化が大切なのです。
最近の地震被害から、構造躯体の性能向上が寄与しているのですが、非構造部材扱い
された2次壁に顕著な損傷が見られる傾向もあります。
これらの部材は、ひび割れ発生後の復元力特性としての性能が乏しく、ひび割れが拡大
したままの状態となり、隣接する開口部の2次製品にまで重大な機能障害を及ぼして
しまうのです。
やはり一般人にとって、非構造壁の顕著な損傷は不安となります。
区分所有形態のマンションの場合には、非構造壁の破壊と言っても、その補修費用の負担
など、居住者の合意形成の難しさも残ります。
したがって、2次壁の破壊を許容する設計に立つ場合には、その設計方針に関して設計者と施主との合意形成に適切な配慮が望まれるのは当然のことである。
ピロティ建物においても「層崩壊を許容する設計法」も同様である。
当事者間において、合意形成のなされない場合は「訴訟」となる可能性が高くなります。
より一層の慎重な取り組みを必要としています。