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特定畜舎等建築物を考える 

(R元年12月15日)

農業用建物 (その1)

農業用建物 (その1)

 全国各地のご依頼から、「特定畜舎等建築物」の構造設計を考えます。

平成14年5月29日国土交通省告示第474号の「特定畜舎等建築物の構造方法に関する

安全上必要な技術的基準を定める件」がメインテーマに該当いたします。

メディアの報じる「米中の貿易関税の争い」から今後は我が国に対して「自動車と酪農」が貿易の不均衡の是正テーマに遡上するようです。

酪農に対して国内の競争力確保の観点から対策を求められているのです。

一般には「家畜」などは「滞在強度」として人間が農業建築物のなかに滞在したときの

密度と頻度を掛け合わせたもので、[ (人・時間) / (50㎡・年) ] という単位で表します。

小規模なものを除き構造種別は「鋼構造(鉄骨造)」が多いのでこれを論じます。

告示第474号では、階数は1階。最高高さ13m以下、軒の高さ9m以下。主要柱相互の

間隔は15m以下。建設地は市街化区域以外で居室を設けないとなっています。

問題は、耐震計算ルートですが「ルート②」の準用となります。

そこで鋼構造では重要な要素が、「横座屈阻止」や「保有耐力横補剛」となります。

「横座屈」とは、はりが材軸を通る鉛直面と直角方向に座屈する現象をいう。

ならば、横補剛とは、この現象を生じないように、梁の水平方向の変形を拘束すること

となるのです。Lateral reinforcement (英字)と言われるものである。

鉄骨構造における梁の変形能力を確保する方法の一つとして「保有耐力横補剛」がある。

梁の変形能力を制約する要因として考えられるのは、「局部座屈」と「横座屈」です。

第1種保有耐力横補剛 → 梁の端部が塑性状態になる梁に対して横座屈をさせない補剛。

第2種保有耐力横補剛 → 終局時に梁の端部が塑性状態にならないが、隣接する材の端部が塑性状態になるまで横座屈をさせない補剛。

はりの横補剛による変形能力確保(=保有耐力横補剛)については、黄色本と呼ばれている

[技術基準解説書]の 621~624ページに詳しく解説されています。

この解説にあるように、横補剛間隔、補剛材の強度と剛性に関する諸条件を満たす梁は、

「保有耐力横補剛されている」となるのです。

 

 

 

 

(R元年12月25日)

農業用建物 (その2)

農業用建物 (その2) 

前回の「ルート②」の準用における「耐震計算」の内容を告示第474号から見てみます。

この告示には構造方法に関する安全上必要な技術的規準を定めています。

基礎の構造計算においては、上部構造からの荷重及び外力を安全に支持し、地盤に伝達

させるための構造であり、上部構造に有害な障害を起こさないものでなければならない。

基本的には、建築物に有害な沈下・変形等を生じさせない建設省告示第1347号第1に

従うことになります。独立基礎や基礎ばり付き独立基礎を排除していないので、耐震計算ルート②による「基礎コンクリートの破壊防止等の確認」と関連する。安易な「布基礎」では上記の規定による検証がむずかしくなります。地盤調査結果によっては「くい基礎」

「べた基礎」「地盤改良」も考慮しなければならなくなります。

次に、「構造計算の方法」である。告示第474号に明記されているとおりである。

当然の事、「法第20条 構造耐力」である。鉄骨造等で延べ200㎡を超えるものを述べる。

荷重の種類は、固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風圧力・地震力が対象となります。

積雪荷重及び風圧力では、畜舎及び堆肥舎の用途に応じて「特定畜舎建築物の種類」が

設定されており、それぞれの種類によって異なった軽減値を採用して荷重を算定できる。

「特定畜舎建築物の種類」は、①堆肥舎、②飼養施設、③搾乳施設等の3種類に区分する。

「堆肥舎」は、堆肥舎及びその付属室が該当する。

「飼養施設」は、家畜・家禽を収容する建築物全般をいい、乳牛舎(乳牛舎の待機場を含む)、

肉牛舎、豚舎、採卵鶏者、肉用鶏舎、及び幼牛舎、幼豚舎、幼雛舎、育成豚舎、分娩舎、

病畜舎が該当する。

「搾乳施設等」は、搾乳舎(ミルキングパーラー)、生乳処理室、搾乳舎及び生乳処理室に

係わる付属室が該当する。

これらの詳しい遡及内容は告示をご参照ください。

 

 

 

 

 

(R2年01月05日)

農業用建物 (その3)

 

農業用建物(その3)

前回に引き続き、「構造計算の方法」です。

力の組み合わせは、施行令第82条に準拠となります。

積雪荷重における「一般区域(最大積雪深1m未満の区域)」と「多雪区域」の区分は

令第86条第二項ただし書きの規定により、特定行政庁の指示に従うものとします。

堆肥舎は、積雪荷重を600 N/㎡が載荷しているとして構造計算を行う必要がある。

「安全性の確保」は、構造計算による「許容応力度計算」を行えばよいとしています。

「使用性の確保」は、地震時の層間変形角の制限(水平変位 / 階高が1 / 200又は1 / 120)

に代表される「変形の適切性」についての照査を義務付けられていない。

しかし、耐力的には十分であっても使用上不都合な変形や振動を生じ、建築物としての

機能を減じさせないよう、告示第1459号に従い、スパンに応じた梁のせいを採用する。

また、常時作用している固定荷重及び積載荷重による梁のたわみ最大値がスパンの1 / 250

以下であること等を確かめる必要がある。

鉄骨造で筋かいを設けた場合、告示第1791号第2の規定により、地震力の割り増し、

筋かい軸部の降伏で耐力が決定するよう端部、接合部の耐力確保等となります。

また、鉄骨部材に局部座屈を生じさせないため、柱や梁に使用する鉄骨部材は、幅厚比を満足(FAランクに限定)する板厚サイズを使用する必要がある。

ほとんどがこの規定により「コスト」に影響している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(R2年01月15日)

農業用建物 (その4)

農業用建物 (その4)

 

引き続き「荷重及び外力」についてです。

告示第474号の規定による内容ですが、基本的に「コスト」に絡みます。

そこで、建設省及び農林水産省が畜舎建築の規制緩和を「畜舎設計規準」として

平成9年3月に建設大臣の認定を受け、平成12年5月に改正しています。

今後、米国からの「農産物の関税」により更なる規制緩和も考えられます。

現状での規制緩和を項目として列記する。

・荷重について

建築基準法では、主として積雪荷重、風荷重が設計上の制限要因となっていたが

下記のように緩和を図った。

【積雪荷重】

畜舎は家畜が常時飼養されているため、その熱気で屋根から雪が滑り落ちること等を

考慮するとともに、地域ごとの積雪の実況によって荷重を相当程度緩和

【風荷重】

畜舎は住宅等他の建物から離れていることを勘案し、これまでの最大風速に基づく

考え方から、地域ごとの風速の実況によって荷重を相当程度緩和

・防火関連規定の緩和 : 詳細は割愛します。

規準の普及・推進では「建設省」や「農林水産省」は地方公共団体、生産者団体、

畜産農家、建築関係者等に対して指導しているとなっています。

そこで参考になるものが以下の文献です。

堆肥舎建築設計の手引き [ (財)畜産環境整備機構、(財)日本畜産施設機械協会 ]

畜舎設計規準・同解説のポイント [ (財)中央畜産会、(財)日本畜産施設機械協会 ]

これらの団体は、いわゆる中央官庁の外郭団体といわれるものです。

中央集権国家の代表的な弊害のひとつであり、中央官庁傘下には4000団体の存在が

選挙のたびに「規制緩和」を唱えています。

今年(令和2年)からの日米貿易協定発効による「牛肉の関税」が酪農にも大きな影響を

与えますので、今まで以上に「農業建築物」に「経済設計」が求められます。

 

(R2年01月25日)

「畜舎設計規準」の規制緩和を活用 (その5)

「畜舎設計規準」の規制緩和を活用 (その5)

 

当方の「ご支援」における「実務の構造計算」からの学びの対応です。

実施設計から規制緩和を活用して「経済設計案」を提出しています。

「畜舎設計規準」の緩和の経緯と背景は前回述べたとおりです。

もっと緩和の要求が出でくるはず・・・それは「日米の貿易不均衡」の是正からです。

「畜舎設計規準」の制定では

  • 外壁への不燃材料使用免除
  • 防火壁の設置義務の免除
  • 地域で20~50年に一度の最大積雪量(7日間)に耐える構造
  • 地域の風の強さを反映した耐風構造

平成12年5月に再度改正され

「家畜排せつ物法」が施行され、適正な管理・処理することを義務付け、堆肥舎等の

整備が求められるようになったので、低コスト化を目的に大幅な規制緩和を導入した。

適用範囲をみますと

  • 適用条件
    • 建設地は市街化区域外とする。
    • 隣接境界線等から、平屋は3 m以上、2階は5 m以上離れて建築すること。
    • 高さは13 m以下、軒高は9 m以下とする。
    • 柱間隔を15 m以下とする。
    • 鉄骨造、木造、鉄筋コンクリート造、又はこれらを併用したものとする。
  • 畜舎・堆肥舎の施設区分

施設区分は、人間の滞在強度により分類

【施設区分Ⅰ】: a

乳牛舎 (搾乳牛舎、育成牛舎)

 肉牛舎 (繁殖牛舎、育成牛舎、肥育成牛舎等)

豚舎 (種雌豚舎、肥育豚舎、分娩豚舎等)

 採卵鶏舎 (育すう舎、育成舎、成鶏舎等)

肉用鶏舎

 これらの施設の付属室

 その他これらに類する畜舎滞在強度が著しく小さい施設

【施設区分Ⅰ】: b

堆肥舎

 堆肥舎の付属室

 

 

【施設区分Ⅱ】

搾乳舎、生乳処理室

 搾乳舎及び生乳処理室に係わる付属室

その他これらに類する畜舎滞在強度が著しく小さい施設

【施設区分Ⅲ】

施設区分Ⅰ及びⅡ以外の畜舎

 (付属舎、選卵・包装施設、ふ卵舎等)

※家畜排せつ物の切り返し作業をスクープ式、ロータリー式など機械で自動撹拌する

 施設や人が入らない密閉型発酵槽等の密閉性の高い施設は、サイロと同様に「貯蔵槽

 その他これらに類する施設」にあたるとして「工作物」扱いとなり、規制を受けない

 こととなった。なお、このような条件に適合する堆肥舎であっても、高さが8 mを

超える場合は「準用工作物」となり、確認申請・構造計算が義務付けられている。

 

 

(R2年02月05日)

「畜舎設計規準」の規制緩和を活用 (その6)

「畜舎設計規準」の規制緩和を活用 (その6)

前回に引き続き「規制緩和を活用」における概要です。

堆肥舎などの建築についての規制緩和の概要は以下の通りです。

  • 屋根材料の規制緩和

延べ面積が3,000㎡以下の堆肥舎は、透光性に優れたポリカーボネート板も使用できる。

延べ面積が1,000㎡以下の堆肥舎は、防火上支障のない範囲で、ポリエステル板、ポリエステルフィルム、フッ素樹脂フィルム等が使用できる。

  • 積雪荷重の規制緩和

従来の規準では、その地域で最大積雪量(7日間)に耐える構造。

項目を畜舎と堆肥舎に区分して改正している。

堆肥舎の屋根勾配が2 / 10以上あって、雪が滑りやすい条件が整っていれば、構造強度を

600 N (ニュートン) / ㎡ (約60 kg / ㎡に相当)まで緩和できる。

したがって、積雪量を1 mで設計している地域でも雪は頻繁に滑落するので、約30 ㎝

相当の荷重で構造計算してよい。

  • 風荷重の規制緩和

竜巻やサンダーストームに伴う強風の不測の事態を考慮して、30 m / secの風速に耐えら

れる構造とする。告示第474号においては「基準風速Voの低減」もある。

※今回の「畜舎設計規準」の改正では畜舎と堆肥舎を別の施設として区分している。

 畜舎については

  • 外壁への不燃材料使用義務の免除
  • 防火壁の設置義務の免除
  • その地域で7日間に積もる最大積雪量に耐える構造
  • その地域の風の強さを反映した耐風構造

 堆肥舎の構造について

  • 屋根材料の不燃規制の一部緩和
  • 積雪荷重の大幅緩和
  • 風荷重の大幅緩和

つい最近の報道によると、農水省は「家畜ふん尿処理施設整備」の支援を拡充した。

2019年度補正予算案に、和牛繁殖雌牛や乳用後継牛の増頭を支援する「増頭奨励金」

22億円を盛り込み、日米貿易協定による「増頭推進」に大きく舵を切ることになった。

 

 

 

 

 

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