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沖縄の建築を考える

(H27年03月25日)

沖縄の最近の動向(その1)

毎回の構造設計技術テーマから、ちょっと一服して「行動的な執務室」のお話です。

過去に「神戸」-「那覇」を2ヶ月に一度のペースで5年間、約60回の往来をさせて

頂き、沖縄諸島・先島諸島と呼ばれる「琉球諸島」をかなりの範囲のご支援でした。

最近になって、一旦休止していた活動に対して沖縄本島から逆に「神戸」での勉強会に

来られる熱心な諸兄に感心し、やはり「学びに終着駅はなし」と感じた次第です。

昨年(H27年)12月に2年間のブランクをおいて、再び「LCC」のお世話になり「関西空港」

から「那覇」への往来の再開となりました。今後は、今迄とは違う「視点」での「沖縄」の現状認識や将来を担う若い技術者にお一人でも多くのご参加を願うのみです。

 日本地図を見ると、北緯26度台に位置する沖縄本島は南北約100kmの細長い島です。

神戸・大阪から約1200kmの空路移動にも2時間は掛かります。

過日、今年(H28年)2月には、「横浜在住」の若い技術者が2泊3日で「勉強会」に参加されましたが・・・彼も構造がわかるから「ピロティ建築物」の多さにびっくりでした。

これが、本土の者から見た「沖縄の不適格建築物」の現状と説明して納得していました。

建築基準法施行令第88条第1項の規定にある地域地震係数Zは、本土の三大都市圏である

「東京」「名古屋」「大阪」は1.0であるのに、この沖縄本島では一律0.7となっています。

しかし、よく見ると沖縄本島最北端(本土側)の辺戸岬から約20kmの距離にある鹿児島県

の「与論島」は、新黄色本P-300の第1の表より「名瀬市及び大島郡を除く」である。

この数値は1.0となるのです。たった20kmの海路で「0.3のギャップ」に首をかしげる。

 琉球大学の元教授の方々にも、一律にZを0.7とすることに意見が分かれた新聞記事の発表も過去にありました。宮古島近海には「新宮古島」が誕生するかも知れない海底火山の活発なマグマ活動もメディアが報じています。

明和8(1771)年、4月24日の大地震では石垣島の「宮良」地区で最大遡上高さ85.4mの

大津波を観測しています。石垣島には「バンナ岳」という230.1mの高い山がありますので

避難を確実にすれば助かります。しかし、宮古島は「野原岳」程度で、ほぼ平坦な地面が

島中に拡がっており、活断層も7本連続して並列しています。南西諸島の落ち着く景色や時間のゆっくり流れる「離島のよさ」を過去の往来で享受させて頂きました。

「住めば都(宮古)」のことわざもありますが、悲しいかな企業戦士の身には夢の願望です。

「建築業界」の沖縄の最近の動向として次回より掘り下げて論評いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

(H28年04月05日)

沖縄の最近の動向(その2)

この連載は、毎回建築構造に関する固苦しい話ばかりでした。たまには「笑える話」やなるほど、こんな「視点」もあるのか・・・と感じて欲しいです。

沖縄諸島・先島諸島と呼ばれる「琉球諸島」は四方を海に囲まれています。それは取りも直さず「海水温度」が島の気象に影響し生活を考えさせられるのです。

「宮古島」でのご支援のあと、沖縄本島へ空路戻る宮古空港にて、本島の地元名士に偶然にも遭遇して、その同伴者のとある言葉が気になりました。「蒸暑地域」です。

本土では馴染みのあまりない言葉ですが、「住まいの研究」に関して本島にはグループも

活動されているようです。滞在先では「新都心の公園」を早朝のウォーキングもします。

それは、蒸して暑い島の生活の上手な方策として身に付いたことなのです。

ウォーキングを一歩、横道に外れると気が付く事があります。それは、「コンバージョン」の大変多い事です。本土でも多いですが、短い周期(2~3年)で地域の建築需要の変化なのでしょうか、それとも経営者の経済の振り子による建築物の用途変更なのでしょうか?

建築ストックのマネジメントが重視される時代とはいえ、すさまじいばかりの「ビルド・

アンド・スクラップ」を垣間見ています。産業廃棄物となった建築備品がうず高く積まれている郊外の空き地や、埋立地での業者の一時堆積状況にも「便利な生活様式」のツケを

感じた時、私達の生活観を見直さないとならないのかと思う次第です。

太平洋や東シナ海に囲まれることは、風の強い日には海潮が風に乗って陸上に襲い掛かります。結果として、「塩害」の被害をもろに受けてしまう。ですから、屋外設置の大型の

給水用タンクは「ステンレス製」で、鹿児島から那覇へ「船便」で島に運ばれています。

性能化時代と建物評価に関して、山口大学の藤田正則教授の資料から、「建物・部材の

寿命」についての論評です。耐用年数の分類の中、注文主は「物理的」「機能的」「経済的」「社会的」「災害上」などの中から重要視するのは、建物用途により異なるが商業用途と

なれば、やはり「経済的」なコンセンサスが最優先です。

「塩害」を激しく受ける立地での店舗となれば、「鉄骨造」は骨格材の厚さが決め手です。

藤田教授によると、t ≦3㎜、3 < t ≦4㎜、t > 4㎜と分類されています。

法定耐用年数は、店舗の「鉄骨造」の場合、t ≦3㎜で19年、3 < t ≦4㎜で27年、また

t > 4㎜では34年となっています。宮古島にあったRC造の「JAの直販店」では棟部の

梁材におびただしい「ひび割れ」が発生しており、ついに「閉館」と「改築」でした。

建物・部材の寿命は要求性能、維持管理、建設地によって大きく異なります。

 

 

(H28年04月15日)

沖縄の最近の動向(その3)

工業製品の寿命について、山口大学の藤田教授の「建物・部材の寿命」の中では、実務として、建築営業や企画に参画している場合には注文主の価値観とのすり合わせとなる。

「意匠」だの「構造」だの言っておれない局面において、性能評価の重要性が浮上する。

特に、「沖縄」の場合、政治的論評は控えさせて頂きますが、県の人口が約143万人であり

年間予算が約5,000億円の内、沖縄振興予算が国の交付金として3,000~3,500億円です。

本島の中を友人に連れて歩いて頂いた折に目に付いたものが、中城湾港と新港関連の埋立地の企業立地用にある「鉄骨造の施設」です。それも桁外れの棟数の建屋が空のままです。

施設一帯の整備区画されたアスファルト道路は格好の「サーキット」や「ローリング族」の使用となり、無用の通行禁止を掲げた建て看板もありますが無視されています。

本土の納税者から見た場合、企業がなぜ進出せず立地できないのか・・・そこを真剣に考える必要があります。人口規模に応じた経済の環状ループの成り立ちのない投資効果の

思惑に誤算があるとしたら、誰かが責任を取る必要があるはずです。

「箱物行政」と揶揄され、「ハード」と「ソフト」の両立なしに予算化されるいきさつに

監視の目を持ち、庶民的な立場から必要な施策が望まれるはずです。

離島への「ロジテック」においても「別価格」とされ、本土との格差があります。

学びに必要な文献類も同様です。「政府刊行物の販売所」も以前の「内閣府」のあった便利 

な場所から、県庁近くへ移転しています。理由は定かではありませんが、庶民には行政の

都合で振り回されているように見えます。

確かに、納税している場合には、地方都市に住むより県庁所在地に住む方が便利供与を

受けて何かに付けて恩恵があります。私の郷里は「兵庫県の日本海側」の人口約5万人で

今は周辺の町を合併して何とか維持されている状態ですが、最近は、「市街地の売物件」が

とても多く目に付く疲弊したて郷里です。そんな故郷から「神戸」へ出て行くにも一日

仕事なのです。朝からの講習会となると「前夜はホテル宿泊」となってしまいます。

ここに、施策側が弊害を感じることに気づきがありません。これは、沖縄県でも同じです。

鉄路はなく、「都市モノレール」が唯一の公共交通機関ですが、沿線から外れれば各自の

「軽自動車」がものすごい量で走り回ります。「時間励行」などあってないに等しい。

スクラップ・アンド・ビルドに少し掘り下げて次回より論評します。

 

 

 

 

 

 

 

 

(H28年04月25日)

沖縄のスクラップ・アンド・ビルド(その1)

2ヶ月おきに滞在しているのは「新都心」と呼ばれるとても便利な場所です。

近隣は、米軍基地だった土地を払い下げられて「文教地区」の様相を呈しています。

それだけに「地価」も高く、土地の有効利用に「平屋建て住宅」の改築が目立ちます。

ただ、また戸建て住宅なのかと思えば、そうではなく「共同住宅」が大変多いです。

それも、壁式RC造がどうしても「強度指向型」の典型的なものとして計画されており

建設工事に従事する「型枠大工・鉄筋工」の人手不足に拍車が掛かります。

東京への空路の便数を見れば、安い人件費の沖縄本島より東京・関東圏へ出稼ぎです。

結果として、島で残っている労働力人口の不足は「即施工単価UP」になり、建設業者の

悩みはつきません。特殊な建材・工法採用となると「船便」です。これがまた「厄介」で

あり、融通が利かない困りものとなります。PHC杭など余れば「産業廃棄物」です。

足らなければ「完成」が遅れます。「塩害」で悩みは「溶融亜鉛めっき処理工場」です。

沖縄本島には、一社しかない。これが、公正な取引となるのでしょうか? 疑問です。

年間のスクラップ・アンド・ビルドに関して、「注文主」「設計者」「施工者」からの視点

よりも、余り関わりのない一般庶民はどう見ているのでしょうか?

島の移動に欠かせない「レンタカー会社」は、コンテナを利用した社屋が大変多い。

平成16年12月6日付国住指第2174号では、「コンテナ」は建築物として取り扱う。

コンバージョン(用途変更)の典型的なこの「コンテナ」は、随時かつ任意に移動できない

状態で設置し、継続的に倉庫等(カラオケルーム)の用途に使用する場合、土地に定着性が

確認できるものとして「建築物」として取り扱うのです。

改築となった一般的な工法のRC造やS造では「大型重機」により「破壊」させ「産業廃棄物」です。唯一、コンクリートは「再生骨材」として生まれ変わり、鋼材も「電炉」へ持ち込まれ再生鋼材となります。その他の廃棄物の有効な利用はなく処分しています。

少なくとも、鋼材等の非構造部材としての都市資源の再使用も考えられるはずです。

 沖縄本島にも、最近、本土の大手住宅メーカーの進出が目立つようになりましたが、

新築ばかりではなく「改築」もついてまわり、結果として建築営業では既存老朽建物に

対する「スクラップ・アンド・ビルド」となってしまいます。

 

 

(H28年05月05日)

沖縄のスクラップ・アンド・ビルド(その2)

過去の「セミナー」では「スクラップ・アンド・ビルド」に対しての一つの提案を

させて頂きました。それは、「ピロティ建築物」の「耐震性の向上」と老朽化した既存

建築物のリニューアルを同時に一石二鳥としてお役に立つ「減築」です。

この「減築」は、「床面積を減らす」方策であり、「ピロティ建築物」の場合、上層の

地震時重量をカットするのですから、「メリット」は多いと思われます。

 具体的には、例えば、現在1階が「柱」だけピロティ状態で5階建ての「EVなし」の

古い共同住宅に対して、入居者の敬遠しやすい4階と5階をカットして、2階・3階部分の

居住空間を入居者の募集をしやすくする「リニューアル」の提案です。

当時のセミナーには、島の建設会社の営業の方々がうなずくように聞いておれらました。それがとても印象的でした。沖縄本島にも、最近、本土の大手住宅メーカー進出が目立ち

ますが、島の企業であっても独自の「技術開発の模索」も目に付きます。

建設業の展望から、今迄にない提案は意外とその専門分野以外の方の何気ない一言から

始まるのが大半です。専門職にはもっと多角的な視点に目覚めを要求しているのです。

「石灰岩」の有効利用とか、砕石以外の特殊な地業提案である「基礎工事」部門にも

活路を見出す努力が必要です。

「プレ(事前)」を活用した「新素材」の構築も企業としての新しい展望が開けます。

「塩害」に強い「レディミクストコンクリート」や「ひび割れの制御」に有効な骨材の

開発も生コン業界で進んでいるように聞いています。

「再生骨材」は、まさに「スクラップ・アンド・ビルド」の中心的存在です。

溶融スラグを使用した「グリーンコンクリート」はCO2を1 / 2に半減しますし、初期の

硬化に時間を要するが、3ヶ月後には耐久性は普通コンクリートを上回ります。

「海砂」の浄化方法にも画期的な提案も期待できます。「水リサイクル」の時代に早く

取組み、粗骨材・細骨材・塩害対応セメントなどや「炭素繊維」の活用も島内でされれば

飛躍的な活路となるはずです。なぜなら、「台風銀座」の沖縄本島ではやはり「RC造」が

まだまだ「生命線」の環境順応工法であるからです。

 

 

 

 

 

(H28年05月15日)

沖縄のスクラップ・アンド・ビルド(その3)

沖縄へのご支援を再開して、気づいたのは「一般登用」のチャンスに恵まれている。

特に、「コンぺディション」や「臨時の雇用員」の募集が多いことです。本土ではあまり

目に付きませんが、本島の地域経済からのCPD取得との優遇性も関連があるのでしょう。

企業への定着率の低さも本土でも論じられますが、自分の活躍に対して使命感が持てる

ように経営側の目配りも間違いなく必要です。

どの地域においても企業の使命は利潤追求ですから、自分の身の置き所をしっかりと

今一度見直し、「スキルアップ」に取り組む気持ちを持つべきです。

常に「学び」は大切です。実際の工事現場での職人さん達の意見も取り入れればもっと

進化した技術開発にも貢献出来そうな予感を感じ取っています。

建設のリサイクルは、多方面で論じられており割愛しますが、必要性や建材の地域事情、

再生技術とも密接に関わります。廃棄物は都市資源と考えると気持ちも楽になります。

建築物の延命化や建設リサイクルなど私達「技術者」には職能知識向上の一環として

しっかり再認識する必要があります。

沖縄に限らず、どの地方であっても「経済の振り子」に振り回されますがしっかりと

進むべき方向性を「スクラップ・アンド・ビルド」の中へ取り込んで行く必要がある。

資源のない我が国の生き残る「技術革新」は待ったなしで突き進むはずです。

取り残されないようにしっかり共に「学び」ましょう。

 

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